今年も早いもので、年の瀬が近づいてきました。2022年は映画業界に活気が戻り、多くのヒット作の話題が飛び交う年となりました。
今回はのコラムは１年の振り返りとして、2022年の映画業界トピックを振り返りたいと思います。
①大型ヒット作が連発 興収100億円超えが4作品となる見込み
2022年の映画興行はコロナ禍の影響から急速に回復し、これまでのところ前年比140％程度となる非常に好調な推移を見せています。加えて、興行収入が100億超える大型ヒットが4作品となることが見込まれています。100億円超え作品が歴代最高本数を記録したのは2004年（ハウルの動く城、ラストサムライなど）の5本。今年の成績は、これに次ぐもので、国内最高興収をたたき出した2019年に並ぶものになります。
特に邦画アニメ作品が強く、21年12月公開の『劇場版 呪術廻戦０』（最終興収138億円）から始まり、8月に公開された『ONE PIECE FILM RED』（興収186.1億円～）など、めざましい興行結果を残しています。11月11日には新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開され、12月5日時点で興収は76億円。最終興収100億円超えはほぼ確実と言っていいでしょう。
実写で唯一100億円を超えたのは、5月公開の『トップガン マーヴェリック』（興収134.7億円～）。コロナ禍以降大作が少なく低迷していた洋画業界の、V字回復を象徴するような一作となりました。
惜しくも100億円には届きませんでしたが、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』は、コナンの劇場版シリーズ最高の興収97.4億円を稼ぎだしました。
【2022年興収BEST5】※2022/12/5時点
1位『ONE PIECE FILM RED』 186.1億円～
2位『劇場版 呪術廻戦０』 138億円
3位『トップガン マーヴェリック』 134.7億円～
4位『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』 97.4億円
5位『すずめの戸締まり』 76億円～
②東映配給作品が絶好調。ドラゴンボール、ONE PIECE、SLAM DUNK
先述した通り、『ONE PIECE FILM RED』は、初動2日間で興行収入が22.5億円、観客動員数が157万人を突破。その後も快進撃を続け、186.1億円という東映配給作品として過去最高の興収を記録、まだ好調な上映が続いており、伸びしろを残しています。
『ONE PIECE』以前では、6月公開の『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が興収25億円のスマッシュヒットに。不正アクセスにより2ヶ月ほどの延期をされるなど受難もあった作品ですが、作品の高評価が追い風となり興収を伸ばしました。『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は全米でも公開され、全世界週末興行ランキング1位、全米オープニング興行収入ランキングにおいても初登場1位を獲得しました。
これらの作品のヒットを受け、11月に東映が発表した令和4年9月中間連結決算によると、売上高は前年同期比47.1％増の854億円、最終利益が約2.2倍の97億円となり、過去最高を更新しました。
12月3日からは往年の名作バスケ漫画を完全新作アニメーションにした、『THE FIRST SLAM DUNK』が公開。初動土日で動員84.7万人、興収12.9億円というこちらも目覚ましいスタートを切っており、さらなる興収の増加が見込まれます。
③『トップガン・マーヴェリック』が社会現象に。「追いトップガン」というワードが生まれる
5月に公開された『トップガン マーヴェリック』が興収134.7億円を超える大ヒットとなりました。コロナ禍以降の洋画では最高の興収です。1986年に大ヒットを飛ばした『トップガン』の36年ぶりの続編として制作。トム・クルーズが本作でも主演をつとめ、俳優が本物の戦闘機に乗って撮影したことでも話題になりました。
『トップガン マーヴェリック』は旧作のファンはもちろん、前作『トップガン』世代ではない若年層にも広がりました。『トップガン マーヴェリック』をリピート鑑賞することが「追いトップガン」と呼ばれ、ハッシュタグを付けての感想の投稿も盛り上がりました。なんと146回も「追いトップガン」したリピーターもいたようです。
IMAXや4DXなどのラージフォーマットの売れ行きが良かったのも特徴です。前作『トップガン』と『トップガン マーヴェリック』の連続上映も盛況となりました。
コロナ禍以降、公開作品が少なく低迷していた洋画が、V字回復をしたことを象徴する作品となりました。
④『ドライブ・マイ・カー』 米アカデミー 国際長編映画賞、『ベイビーブローカー』カンヌで受賞
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2022年は、日本人監督が世界的に注目された年でもありました。
濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』（2021年8月公開）は、第94回アカデミー賞で日本映画史上初となる作品賞にノミネートされる快挙を遂げました。ほか、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせて4部門でノミネート。作品賞・脚色賞に日本映画が選ばれるのは、米アカデミー賞史上初となります。また、監督賞へのノミネートは1986年の黒澤明監督以来、国際長編映画賞は2019年の『万引き家族』以来です。『ドライブ・マイ・カー』は国際長編映画賞を受賞、日本映画がアカデミー賞で国際長編映画賞（旧外国語映画賞）を受賞するのは、『おくりびと』以来13年ぶりの快挙となりました。
また是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』（2022年6月公開）は是枝裕和監督初の韓国映画で、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品。主演のソン・ガンホが、最優秀男優賞を受賞しました。韓国人俳優がカンヌで最優秀主演男優賞を獲得するのは初めてのことです。さらにコンペティション部門とは別に、「人間の内面を豊かに描いた作品」に贈られるエキュメニカル審査員賞にも選ばれました。
⑤埼玉と福岡に新規シネコンOPEN。老舗ミニシアターの閉館が相次ぐ。
※ユナイテッド・シネマ ウニクス秩父プレスリリースより
2022年は2つのシネコンが開業しました。「TOHOシネマズ ららぽーと福岡」は、4月に「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」内に、9スクリーン、1,322席のシネマコンプレックスとして誕生。TOHOシネマズ独自規格の 「Wプレミアムシアター」 と「轟音シアター」 を導入。日本初となる「Yogibo（ヨギボー）シート」も導入されています。
「ユナイテッド・シネマ ウニクス秩父」は7月にオープン。埼玉県秩父市としては約29年ぶりの映画館であり、ユナイテッド・シネマグループとしては41劇場目のシネコンとなります。秩父の山々を一望できる館内は、木目調や石目調、曲線を多用した心落ち着く空間となっています。
来年は春に「109シネマズ プレミアム新宿」、「ＴＯＨＯシネマズ ららぽーと門真」がオープンが予定されており、他にもいくつかの映画館の開業準備進められています。
一方で、今年は老舗映画館の閉館が相次ぎました。7月には、ミニシアターの元祖ともされる「岩波ホール」が54年の歴史に幕を下ろしました。また9月には関西のミニシアター文化を牽引してきた「テアトル梅田」がテナント契約の終了を理由に閉館。11月は「飯田橋ギンレイホール」が入居しているビルの建て替えに伴って48年の歴史に幕。近隣での移転再開を検討中ですが、日程はまだ未定となります。
ミニシアターは長年にわたり個性の強い質にこだわった作品を世の中に届け、国内の若手作家の才能を育ててきました。公的な支援を含め、業界全体で応援する仕組みが必要な時期なのかもしれません。
以上がサンライズ社が選ぶ2022年の映画トピックでした。
2023年は今年以上にバラエティに富んだ数多くの話題作が公開を待ち構えています。今年以上に明るい話題に満ちた1年になるといいですね！