4月から5月にかけての映画業界は、1年の延期を経て公開された『名探偵コナン 緋色の弾丸』が大きなヒットとなる明るいニュースがありました。
一方で、各都道府県への緊急事態宣言発令に伴って東京、関西エリアの映画館の休館や時短営業などの動きがあり、各映画館や映画会社はその対応に追われている状況となっています。
映画館休業要請を受けて全興連が声明を発表
今回の緊急事態宣言で、東京と関西地区の映画館が休業要請の対象となったことに対し、全国興行生活衛生同業組合連合会(以下全興連)では5月6日に声明文を出しました。
全興連では「興行場の観客席側での感染事例は1件も確認されていない」ことをあげ、また「映画館の場合、作品の鑑賞を希望されるお客様が、緊急事態宣言対象外の近県の映画館に移動されることは、むしろ「人流の増加」につながる可能性さえあり、我々の経営基盤をゆるがすのみでなく、『人流の抑制』政策に合致しない」との見解を表明しました。
【参照】緊急事態宣言及び緊急事態措置の延長に対する声明(2021年5月6日)
12日以降、一部で休業要請の対象が緩和されましたが、東京都・大阪府による映画館への休業要請は依然として続いています。
ミニシアターなどでは多くが営業を再開しましたが、多くのシネコンでは休業を続行していることから、全興連から『映画を愛する皆様へ』と題した2回目の声明文が出されました。百貨店や劇場などへの休業要請が緩和されている中、線引きがあいまいなまま映画館への休業要請が続いていることに、強く抗議する内容となっています。
【参照】東京都における緊急事態措置に対する声明文(2021年5月11日)
これまでも各映画館は徹底した感染防止対策に全力を尽くしてきました。
109シネマズでは、新型コロナ対策への取り組みを動画で紹介しています。
イオンシネマでは、15館で座席の両サイドに高さ1100ミリメートルの木製パーテーションを付けたボックス席を設置。前後の座席配置も半分ずらし、真後ろに席がないように配慮するなど、新型コロナ対策を行っています。
【参照】コロナ下で映画館はどうあるべきか、イオングループの答え(ニュースイッチ)
他映画館チェーンでも同様に席の間引き販売、キャッシュレス専用レジの導入や非接触形式のチケット確認など、状況に合わせたコロナ対策が推進されています。
作品の上映・延期は判断が分かれる
大都市圏の多くが休業となったことで、4月末から5月にかけての映画作品は上映か延期かの判断を迫られることになりました。
いくつかの映画作品は公開延期を余儀なくされましたが、当初予定をしていたスケジュール通りに公開を決断している映画もあります。
『くれなずめ』は4/29日の公開予定から、休業要請明けと目されていた5/11公開予定に変更。東京・大阪の休業要請が延長されたことが決定されても、12日水曜日のイレギュラー公開に踏み切りました。
『地獄の花園』、『いのちの停車場』は予定通り5/21に公開することを決定。東映は5/15付の全国紙に『いのちの停車場』を予定通り公開するにあたって、「映画は心に必要」、「映画館は感染症対策を徹底しております。安心してお越しください。」とのメッセージを載せた全面広告を掲載しました。
【参照】吉永小百合主演映画「いのちの停車場」一部地域除き予定通り21日公開決定
映画ファンの間でも、休業要請に疑問の声
東京都の映画館への休業要請の見直しを求め、映画関係者や賛同者による無言の抗議活動を行いました。抗議活動は感染対策徹底のため「映画館への休業要請に抗議します」と書かれたパネルを持って立つ形式で行われました。
また、SNSでもハッシュタグ「#映画館の休業要請に抗議します」をつけて、Twitterでツイートによる抗議活動が行われています。
映画ファンの間でも今回の映画館休業要請に対しては、疑問の声が多く上がっています。
日本トレンドサーチの調査結果によると、映画館休業要請に対して「理解できない」と答えた方が全体の76.6%にも及びました。施設によって休業対応の差があるのはおかしい、無言で鑑賞する映画はリスクが少ないのではないか、といった声が上がっています。
【参照】【演芸場は営業可でも映画館はダメ?】施設によって措置に差があること「理解できない」が76.6%(日本トレンドリサーチ)
こういった時期だからこそ、人々に元気や勇気を届けるエンターテインメントの存在を求める声が多くなっています。
世界に目を向けると、欧米ではワクチン接種が進むことによってロックダウンが緩和され、長らく休業をしていた映画館が再開し始めています。アメリカやフランスでは現地で公開された『劇場版 鬼滅の刃無限列車編』が興行成績のトップになるなど日本人として嬉しくなるニュースも聞こえてきています。
私たちも映画ファンのために努力を続ける映画業界を応援し、安心して映画を観られる日が一日も早く来ることを願います。