『花束みたいな恋をした』が大ヒットを遂げています。近年の恋愛系邦画作品の中でも、稀に見るスマッシュヒットといえそうです。
コロナの影響をものともせずヒットをした背景には、「口コミ」の力があります。今回は口コミ型ヒット映画について分析してみましょう。
『花束みたいな恋をした』は口コミ型ヒット作品
『花束みたいな恋をした』
『花束みたいな恋をした』は、菅田将暉・有村架純がW主演を、ある恋人たちの5年間を描いたラブストーリーです。
大都市圏の緊急事態宣言続く1月29日公開でありながら、6週連続1位、7週目で興行収入も30億を超えました。
口コミで高い評価が広まったからだと考えられます。このヒットをサンライズ社的に分析してみました。
サンライズ社では、映画のヒット基準の見方として「初動対比」という数字を持っています。 「初動対比」とは、公開から2週間の動員数に対して、 公開直後の金・土・日3日間の動員数の占める割合のことです。
2週間動員数÷3日間動員数=初動対比
この数字が低いものは、公開直後にドン!と飛び出すタイプ。 シリーズものやコアなファン層がついている作品が多いです。
この数字が高いものは、出だしはそうでもないが徐々に数字を伸ばしていくタイプ。 いわゆる口コミ型タイプです。
タイプの違いであって、高いほうがいい、低いとダメというものではありません。
「花束みたいな恋をした」の初動対比は450%。 初動対比の中央値は267%なので、これは突出して高い数字です。
「花束みたいな恋をした」は典型的口コミ型作品といえるでしょう。
口コミ型ヒット作品は「初動対比」がすごい!
2018以降で、初動対比が出ている作品508作中10位までを以下の表にしました。
公開日 |
タイトル | 初動対比 |
2019/10/11 |
真実 | 555% |
2019/10/11 | 最高の人生の見つけ方 | 536% |
2019/4/26 | 東映まんがまつり | 533% |
2019/4/19 | 愛がなんだ | 532% |
2019/10/11 | イエスタデイ | 502% |
2018/5/19 | モリのいる場所 | 490% |
2018/12/21 | シュガー・ラッシュ:オンライン | 460% |
2019/12/27 | 男はつらいよ お帰り 寅さん | 454% |
2021/1/29 | 花束みたいな恋をした | 450% |
2018/12/28 | こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 | 449% |
『花束みたいな恋をした』よりも上の作品は9作品となります。
このうち『東映まんがまつり』と『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、それぞれ公開後にゴールデンウイーク・年末年始休みに突入した影響で伸びたと思われるので除外すると、『花束みたいな恋をした』よりも上の作品はわずか7作品しかないことになります。
上記のラインナップだけ見るとシニア向けが口コミ型になりやすい傾向があるように思えますね。
初動対比が出ている作品の割合を以下のグラフにまとめました。
※サンライズ社調べ
全508作品中で、初動対比400%以上の作品は23作品。なんと全体の4.5%しかありません。
こうしてデータでみると、改めて450%をたたき出した『花束みたいな恋をした』の初動対比がかなり高い数値であることがわかります。
同傾向作品『愛がなんだ』のケース
『愛がなんだ』
『花束みたいな恋をした』と似た傾向の恋愛もので、かつ『花束~』よりも初動対比が伸びている作品が『愛がなんだ』です。
『愛がなんだ』は2019年4月19日公開。上映館数が78館と、『花束~』と比べるとかなり小規模な作品。ただし、『花束~』が350館規模になったのは、コロナでスクリーンに空きがあったという背景がありますので、本来はもっとスペックが近い映画であったと言えます。
『愛がなんだ』は20代、30代の女性を中心に口コミで集客し、初動対比532%という高い数値となりました。最終動員も28.2万人と、ミニシアター系とは思えない伸びをしています。最終動員の伸びに関しては、3週目からGW期間にかぶったのも要因といえそうです。
『花束みたいな恋をした』も、上映館数が少なければ初動対比500%越えのスペックであった可能性があります。『花束~』は上映期間が大型連休にかぶっていないので、あるいは『愛がなんだ』よりも口コミのパワーは強いかもしれませんね。
『花束みたいな恋をした』ヒットで盛り上がるのは映画業界だけじゃない?
『花束みたいな恋をした』
各種映画ニュースでも、『花束みたいな恋をした』のヒットが取り上げられています。
>>『花束みたいな恋をした』ジワジワと22億超えヒット! メジャー以外の20億超えは3年ぶり(エキサイトニュース)
メジャー配給作品以外で20億円の興収をこえるのは、なんと3年ぶりの快挙です。コロナ禍で厳しいニュースが多い中、映画業界にとって明るい話題となりました。
>>菅田将暉・有村架純の『花束みたいな恋をした』ロケ地“調布”からうれしい悲鳴!(週刊女性PRIME)
『花束みたいな恋をした』のヒットは映画業界だけではなく、作品のロケ地である調布市にも嬉しいニュースをもたらしました。映画の舞台を訪ねる人が急増し、ロケ地マップも増刷が検討されるほど。
近年、映画のロケ地は大きな注目を集めています。今回の調布市のように自治体がロケ地マップを作成することも珍しくはありません。いわゆる「ご当地映画」のようにその土地ならではの題材ではなくても、映画のロケ地として注目されることで地元に様々な経済効果が期待できます。
映画館に来場するのは、基本的に映画館周辺に住む方々です。地元がピックアップされる映画であれば、興味を持って足を運ぶ方も増えるでしょう。
小規模上映の映画でも、ロケ地周辺地域の映画館では多くの動員が見込めるケースもあります。
映画のヒット背景には、様々な要素があります。
サンライズ社では、ヒット間違いなしの大作はもちろん、ご当地映画、コアなファンがいる映画など、様々な需要に合わせたシネアド上映のご提案が可能です。
ぜひご相談ください。